ミュンヘン スペシャル・エディション
トニー・クシュナー(脚本)エリック・ロス(脚本) 角川エンタテインメント

グループ:DVD /ランキング:9999
価格:¥ 3,343
発売日:2006-08-18 /通常24時間以内に発送
カスタマーレビュー
おすすめ度:
極めてスピルバーグ的な「HOME」への執着と、ディアスポラの現実 
(2008-08-07)
これまで政治的・歴史的テーマを扱うとその主題的な重大さに足を掬われている感のあったスピルバーグだが、この『ミュンヘン』では極めて複雑な問題を前にみごとに自身の作家的中心主題を貫き、しかもその問題に深い疑問を投げかけさえする、いわば「これまでの自分を超える」映画を作り上げた。
パレスティナ紛争やテロとテロへの報復という表面的な題材だけで受け取られがちで、実態をなんにも分かってないパレスティナ支持派のほとんど反ユダヤ主義差別としか思えない(「スピルバーグはユダヤ人です」って、じゃあ日本人はみんな天皇陛下万歳なんでしょうか? 想像力なさ過ぎ)批判も出ているみたいだが、『ミュンヘン』の主題の中心は「HOME(家/故郷/祖国)への執着」という『ET』以降のスピルバーグ映画を貫くテーマであり、それこそがパレスティナ問題の根本的な問題であることを、スピルバーグはこの映画でちゃんと見抜いている。
流浪の民であったイスラエル人がホロコーストを体験したあとでは安心して暮らせる祖国イスラエルが必要になり、なにがあろうとそれを守り続けることが至上命題になるのはある意味当然の欲求だ。主人公の側ではそのHOMEへの思いが、両親の話や任地でみんなでイスラエル風の料理のホームパーティーを開くところ、主人公の妻などを通して繰り返し描かれると同時に、それを守るためにはなんだってやるという頑さと身勝手さ、その矛盾が次第に浮かび上がる。
一方でイスラエル建国はパレスティナ人の故郷喪失を直接意味し、その深い悲しみはローマで最初のターゲットとなるワエル・ズワイテルを演ずるパレスティナを代表する名優マーカム・クーリーが登場するなり『千夜一夜物語』のイタリア語版を準備中ということでアラビア語とイタリア語でアラビア文学の最高峰を朗唱するところから、明確に示される。それがローマという極めてヨーロッパ史的な空間のなかに映し出されることからして、スピルバーグ演出が冴え渡る。暗殺されたズワイテルの死体がミルクの海に倒れ込むというショッキングなショットは、「蜜と乳の流れる地」である「HOME」をめぐって争う二つの民族を描く上で極めて象徴的だ。
ホロコーストをHOMEつまり安心して暮らせる祖国/故郷への思いで演出してしまった結果、スピルバーグの意図に反してユダヤ人右派プロパガンダになってしまった『シンドラーのリスト』の過ちを自ら正すかのように、スピルバーグはパレスティナ、イスラエル双方の「HOME」への思いを対置させながら、双方の矛盾を浮かび上がらせる。『エンジェルス・イン・アメリカ』の劇作家が書いた脚本であるせいか、パレスティナ人ゲリラの青年のスピーチなどの説明でしかない説教臭い台詞はご愛嬌だが、かつてのレジスタンス活動家で非合法活動に従事して国家の外に自分たちのHOMEを作り出しているミシェル・ロンズダール、マチュー・アマルリックらのフランス人一族、ニューヨークのブルックリンに引っ越して「この街はひどいわよ。エルサレムよりも教会が多いんだから!」と冗談を飛ばす主人公の妻など、モサドとパレスティナ・ゲリラ双方の切羽詰まった深刻さと対比される映画的要素は、とてもよく効いている。今まで「女が描けない」と言われて来たスピルバーグが、この妻や、オランダ人の女殺し屋など、とても存在感のある女性像を何人も登場させているのもいい。
なかでもパリにベースを置くファタハ活動家マリー=クロード・ハムシャリを演ずるパレスティナ人女優ヒアム・アッバスが、子どもを学校に送るために軽やかに運転手付きのベンツに乗り込む上品さは素晴らしいし、彼女やマーカム・クーリーなど、アラブ側の出演者はほとんどが本物のパレスティナ人の名優で、アラビア語の台詞も端々にある。それに対しイスラエル側はイスラエル人も出ているが、ユダヤ系、非ユダヤ系双方を含む国際的なキャスト(ドイツ人、フランス人にオーストラリア人や南アフリカ人まで)で、台詞は様々な訛りの英語。アメリカ映画だからヘブライ語では撮れないというだけではない、この自らの言語が観念としてしかない、もはや理論的・観念的にしか民族ではありえないユダヤ人、それでもユダヤ人でしかあり得ず、頑なにユダヤ人国家を守ろうとする頭でっかちな怖さが、強烈な悲劇として浮かび上がって来る。
パレスティナ問題やテロリズム(ちなみにモサドがこの映画でやっているのは、完全に「テロ支援国家」だし、それを上層部は自覚している)、暴力の連鎖はもちろん重要なテーマだが、その根本にあるHOME、故郷、家、祖国、自分の属する場を夢見る執着の問題をきちんと見せていることに、この映画がスピルバーグの傑作となった理由があるのだろう。これまで「子どもの映画」とも揶揄されてきた彼が、真に大人の映画を作ったことも特筆すべきである。またやたらカット割を細かくして見た目のショッキングさを追求する近年のハリウッドにおけるアクション演出の薄っぺらさに敢然と背を向け、長廻しを駆使してアクションのまっただ中に観客を引きずり込み、アクションのなかにこそ主題を鮮烈に浮かび上がらせる手腕には脱帽する他ない。
ケチをつけるならアーヴィン・クシュナーの書いた台詞が演劇的で説教臭過ぎるのと、リン・コーエンの演ずるゴルダ・メイヤーはいろんな意味で要らない。一方でパレスティナ側を演じるパレスティナの名優たちや、アヴナーの妻役のエイレット・ズレール、顔はほとんど映らないが本物の元コマンドーだけに身体の動きが本物のリロン・レヴォ(ベイルートの襲撃シーンで登場)など、イスラエルの俳優たちがいずれも素晴らしい。ほとんどキプロスでロケしただけらしいが、世界各地の風景をきちんと再現した美術・撮影が、故郷を失った人々のさまよう魂を際立たせている。
隠された真実へのアプローチ 
(2008-06-28)
テロへの復讐と見るか、テロとの戦いととらえるか意見の分かれる作品です。
スピルバーグはお金儲けはもういいから世界を変える映画を作りたいと思い
この作品を世に出したとのこと。
そのため、スピルバーグはこの作品でイスラエルに入国できなくなりました。
初見は映画館で彼女と一緒に観たのですが、観終わった時は
二人ともぐったりでした。
DVDで再度、鑑賞しましたがやっぱりぐったり・・・
内容がかなり過激なので、見るには覚悟を決めて下さい。
へこみます 
(2008-05-12)
この映画を平和な日本人が見たら
イスラエルとパレスチナいい加減仲良くしようよ〜
と言いたくなります。が、
こーんな悲惨な殺し合いを昔っからやり続けていたら
絶対仲良くなんかなれないとも思ってしまいます。
映画が160分と長い上に、殺し合いもめちゃくちゃリアルで
ほっぺた弾丸貫通でも生きてるとかトラウマになりそうなくらい
血まみれな映像盛りだくさんです。
はっきり言って見終わった後へこみます。
スピルバーグは戦争やめようというメッセージを届けたかったと思うし、
事実見た人には届いてます。
が、2回は見たくないです・・・かいわそうすぎて。
楽しんでみるものではない。 
(2008-02-04)
1972年のミュンヘンオリンピック開催中に起きた黒い9月事件、それに対するイスラエル政府のパレスチナへの報復活動を描いた作品。
この映画についてスピルバーグは、これは事実を描写した映画ではなく、事実をもとにして描いたフィクションであるという主旨の発言をしている。
しかし私がそのフィクションを観て思い浮かべるのは、いまそこにある、解決もつかないし納得も出来ない、どうしようもない現実である。
そして様々な疑問が沸き起こってくる。
ユダヤ人、イスラエル、パレスチナ。
何故ユダヤ人は歴史上のいつどの点においても厄介者扱いされ、迫害を受け続けてきたのか。
ユダヤ人もパレスチナ人も何故あのイスラエルの土地に固執するのか。
約束の地とは何か。
キリスト教ユダヤ教イスラム教は何が違うのか。
それらの問題のどれもが今を生きる多くの日本人にとって馴染みがうすく、どうしても分かりにくい問題である。そしてそれらについて全く無関心であると、この映画を観てもいまいちピンとこないのではと思う。
しかしそこには間違いなく人間にとって普遍的な問題がある。
われわれ人間は何故殺しあわなければならないのか。
いつまでそれを続けるつもりなのか。
「平和」のために「殺しあう」という矛盾。
戦争とは。差別とは。宗教とは。国家とは。平和とは何なのか。
それらは一体なにを意味しているのか。
日本人はユダヤ人と彼らに関する諸問題それ自体に直接関係しているわけではないと思うが、その問題を通じてわれわれが考えるべきことはいくらでもある。
この映画はそれらの問題に関心を持ち、考える一助となれば良いのではないかと思う。
そうやって改めて問題提起するためにスピルバーグはこの映画を撮ったのではないかと思う。
テロvsテロ、ひたすら陰惨な報復物語 
(2008-02-03)
スピルバーグが監督してんだからもう少しエンタテインメント的要素があるのかと思ったが、さにあらず。冒頭から実写映像を交えたミュンヘン五輪テロの凄惨な場面。で、その後はモサドの指令を受けた工作員達の報復暗殺テロが延々と続く。やはりイスラエルって異常な国だねえ。
出てくる俳優が顔も名前も知らない人ばかりだったが、皆演技派でかえってドキュメンタリー的なリアリティはあった。ただあまりに映像やストーリーは陰惨で、ラスト近くで主人公が妻との性交中、フラッシュバックで空港でのテロ制圧を回想している場面には、正直吐き気を催すほどの嫌悪感を感じた。
なおファッションや風景など70年代の雰囲気はよく出ていたと思う。